2022年5月22日、北陸富山の地で人生初のフルマラソンを走りました。
きっかけ
きっかけはコロナ禍となった2020年の春から始めたジョギング。
最初は限りなくウォーキングに近い速さで家の周りを2キロくらい。
それからすこーしずつウォーキングに近いジョギングの距離が伸びて、秋には10キロを走ることができた。
当時49歳の僕にとって、人生で最長距離のランニングでした。
エントリー
10キロ走破の達成感と勢いで、2021年1月開催のマラソン大会にエントリーしました。
毎年冬に地元で開催される湘南国際マラソンです。
僕の頭の中には、
「死ぬまでに一度はフルマラソン42.195kmを完走してみたい」
という思いがずっとあったのですが、
いま考えるとあのときは、
「ポッチちゃった」
くらいの軽いノリでした。
ほどなくエントリーした大会はコロナの影響でキャンセルとなりました。
この頃はマラソンに限らず、世界中でスポーツやコンサートなど、あらゆるイベントが中止となっていました。
このとき僕の中には、初めて走るマラソンへのプレッシャーがあったせいか、ホッとする気持ちが8割くらいで、中止の知らせは実にあっさりと通りすぎました。
ただ、マラソン大会はなくなっても、すでに習慣となりかけてたジョギングは、それからも細々と続きました。
二度目のキャンセル
東京五輪が開催された夏を迎えたころ、2022年2月に開催されることになった湘南国際マラソンに再びエントリーしました。
今回はレースまで半年以上の時間があります。マラソンについてインターネットや本で調べたりしながら、徐々に走る覚悟を固め、僕なりに準備をしていきました。
そして新年を迎えた時には、年賀状に「2022年マラソン挑戦!」と書いたりして張り切っていたものの、大会1ヶ月前の1月中旬、2年連続の開催中止が決まってしまいました。
こんどは前回と全く違い、目標を失った空虚さと残念な気持ちしかなく、「来年の大会まで待とう」という考えにはなりませんでした。
魔法の名水
そんな時、たまたま”第39回 カーター記念 黒部名水マラソン”に出会います。
5月下旬の開催でまだ受付中。40年近く開催を重ねる地方の伝統あるレースながら名前も知りませんでした。
他にも近場で開催される大会や申し込みできる大会はあったのですが、なぜか迷うことなく「この大会だ!」と思いました。
結果として、この直感は正しかったです。
RUNNETによると、もともとアットホームで高い評判の大会。3年ぶりの開催に運営者の方々の並々ならぬ熱意と市民の皆さんの喜びが滲み出ていました。
大会スタッフや地元の方々のホスピテリティと応援はどこをとっても温かくて最高に素晴らしい!
軒先で応援してくださる住民の皆さんの声援は途切れることがなく、何十とある沿道から提供される爽やかな私設シャワーも嬉しい!
また、町中のいたるところから湧き出る冷水は、名水の大会名に恥じない至極の美味しさ!
エイドの富山名産「ます寿司」や富山湾の深層水塩が練り込まれた「塩ソフトクリーム」も滅茶苦茶おいしい!
初めてのマラソン大会ながら、望外の付加価値に心から感動しました。
初レースの展開
そして肝心のレースの方は、沿道のシャワーの水がすぐに干上がってしまうほどの暑さで、コース上は30℃近い厳しいコンディション。
それでもレースになると気持ちが高揚するせいか、右手に巻いたガーミンを頻繁に確認して頭ではスピードを抑えようと考えるものの、ついついペースが上がってしまいます。
前半は黒部川が作った美しい扇状地を、扇の要である宇奈月方面へと向かっていき、緩やかな登り基調をひたすら行きます。
テーパリングの効果もあってか序盤は快調に感じてたものの、15キロくらいから足が重くなりはじめます。緩坂のせいで想像以上に足を消耗していたようです。
少しずつペースが落としながら、20キロを通過し、ハーフ地点を過ぎてさらに進んでいくと、ようやく23キロで折り返し。
ここから一転、下り基調となったおかげで足に元気が戻ります。
少し身体も軽くなる中、田んぼを抜けて黒部川沿いに日本海へ向かっていきます。
35キロの壁と女神
そして、30キロを通過。まだまだ気力十分!
ただ、これまで走った人生最長の距離は32キロ。
いよいよここからが未知の領域です。
そして、やはりと言うか、35キロを過ぎてからは足と頭の動きが明らかに鈍ってしまいます。
これが俗に言う「35キロの壁」なのか。
朦朧とする意識の中、コースの真ん中に立って、一人一人のランナーに大きな声で熱い声援を送り続きる女性が見えました。
「ここからですよ!」
「がんばってくださーい!!」
なんと、Qちゃんこと高橋尚子さんです!!
言わずと知れた、フルマラソンの五輪金メダリストにして元世界記録保持者。
初めてのマラソンで完走できるかどうかの瀬戸際の中、今この瞬間に世界中のすべてのマラソン完走経験者をリスペクトし直すくらいの「青色吐息」の状況において、
「マラソンの神様」のような人に応援してもらえる幸せ!
僕のテンションは最高潮に達しました。
「ゴールすること」「歩かないこと」「楽しむこと」
そんな世界一の激励をいただいても、覚悟したとおりに最後の5キロは、
両脚が攣り、身体は鉛のように重くなり、とにかく立ち止まらないことで精一杯となりました。
僕は、一度歩くことを許したら、そのまま走れなくなると思いました。
そして、40キロ以降は、足だけでなく、まるで時間も止まってしまったような、これまで経験したことのない、ながーい2.195kmでした。
それでも最後の最後まで沿道の応援に後押しされ続けて、なんとか無事に生還
いや、見事にフィニッシュ!!
スタート前に決めた、
「ゴールすること」「歩かないこと」「楽しむこと」
を達成!!
ネットタイム4時間11分17秒の激闘でした。
そして次へ
レースの結果と内容は納得と反省が半々くらいでしたが、この感覚が次のマラソンへと続くツボなのでしょうか。
フルマラソンを経験した人は、もう二度と走りたくなくなる人と、すぐに二度目を走りたくなる人の二つに分かれると言われます。
もちろん僕は、完全に後者となるのでした。
つづく