
2025年4月、日本で最も大きなトレイルランニングのレースであるMt.FUJI100を観ました。
観ました、というのはテレビのドキュメンタリーを視聴したのではなく、友人の応援とサポートでスタートからゴールまでを自分の目で観てきたのでした。
100マイルレース
Mt.FUJI100は、総距離で160km以上にもおよぶ富士山の山麓を走りつなぐ、壮大なアウトドアイベント。
エリートランナーは20時間前後でフィニッシュしますが、多くの一般ランナーは45時間の制限時間までゴールを目指して動き続けます。
累積標高は6,000メートルにもおよび、ピークを越えても越えても新たな山が目の前に現れる。
おまけに、スタートから25時間を超えると、2回目のナイトランとなり、真っ暗な夜中の山道を、とっくに限界を超えた足を引きづりながら進んでいく。
さらに、超がつく長距離のハードルもさることながら、胃腸障害が大きな壁となってランナーの行手を阻む。
長時間のレースでは、多くの選手が胃腸に変調を起こし、吐き気や下痢を伴えば、脱水やエネルギー切れで動けなくなってしまいリタイアやDNFに追い込まれます。
今回の応援では、時にコースを逆走しながら、僕は友人だけでなく、たくさんの選手たちに声援を送りました。
そんな中、100マイルのランナーたちの、謙虚で笑顔を忘れず、ひたすらにゴールを目指して前を向いている姿がとても印象的でした。
いや、実際のところは、エントリーしたことを心の底から後悔し続け、今ここでレースをやめる理由を両手で足りないくらい頭に思い浮かべながら、長い道のりの間、ずっと葛藤していたのかもしれません。
けど同時に、極限の疲労と睡魔で朦朧とする意識の中で、「100マイルの先に何があるのか」をスタートからゴールまでの間ずっと想像していたのではないかと思います。

深夜特急
旅の目的が単に行くことだけになっていないか
大事なのは「行く過程で何を感じられたか」
目的地に着くことよりも、
そこに吹く風を、流れている水を、降り注いでいる光を、行き交う人々を、
どのように感受できたが、はるかに重要
もし旅をするかどうか迷っているなら、私はこう言うでしょう
「恐れずに」
同時に付け加える
「しかし、気をつけて」
上記は、沢木耕太郎さんの「深夜特急」のあとがきに書かれていた一節です。
Mt.FUJI100のスタート会場に車で到着する直前、ここ数ヶ月のロング走の際にAudibleでずっと聴き続けてきた深夜特急の最終章が終わりを迎えて、このメッセージを耳にしました。
僕も、いつか100マイルレースの「旅」をして、そこで何を感じるのか確かめてみたいと思ったのでした。

旅はつづく