2023年6月25日、第38回サロマ湖100kmウルトラマラソンに挑戦しました。
スタートラインへ
今回はゴールすることを諦めてスタートラインに立った
レースに挑むテンションは上がらず、起床時にストレッチはしたものの直前のウォームアップはほとんどなし
左脹脛をテーピングでガチガチに固める(バランスを考えて右も)
足首はニューハレXテープ左右とも3枚貼り(3枚は初めて)
そして両膝にはVテープ
ウェアリングは気温が上がりそうだったので、Tシャツ、ドライレイヤー、アームカバー、短パン、インナーショーツ、ゲーター、五本指ソックス、キャップ、サングラス
携行品として、ケータイ、保険証、カード、小銭、お守り、ソフトフラスク2本とゼリー各種、をザックと短パンに分けて装備
ザックには、ウィンドブレーカーの上下と携帯の充電バッテリー
本当ならドロップバックがあるので余計な負担となるザックは置いて走りたかった
わざわざ荷物を背負ったのは大エイドに行くまでの途中リタイアを前提として考えてのもの
そして、スタート地点に向かって湧別町の会場の芝生の上を歩いてると、
左脹脛に「例の」鈍い痛みを感じてしまった、、、、、
やはりキセキは起きなかった、、
と思った
静かな号砲
4年ぶりのサロマでの号砲
ウルトラマラソンらしいのんびりとした雰囲気でスタート
約3千人のランナーたちの熱い思いが、100km先の目的地へ向かって静かに動き出す
長い旅のはじまりとなるゲートをくぐると、徐々にランナーたちのスピードが上がりはじめる
僕の意識は左脹脛に100%、いや200%
とにかく痛みが出ないよう、頭のてっぺんからつま先までのあらゆる部分のバランスに気を配りながら一歩一歩、慎重に足を動かす
一番注意すべきことは、絶対にスピードを出さないこと
なので後ろから、次から次へとランナーたちに抜かれても気にならない
沿道の応援も景色もまったく目に入らない
手探りの前半
5km、いつ何がきっかけで左脹脛が爆発するかわからないことへの不安しかない。異変が起こればそこでThe End。手探りで慎重に足を進める
10km、周囲の流れに乗っかって、630の目標ペースで巡航。少しだけ応援や景色が目に映るようになる
10kmすぎにトイレに立ち寄る。長蛇の混雑で10分以上待ったが、今日はタイムは関係ないので問題なし
15km、とにかく寝た子を起こさないように足元を意識。道路の中央よりも右寄りを走ると、車の轍の傾斜のせいで左の足首が伸びにくくなって左脹脛に良さそう。とうとう巨大なサロマ湖が見えてきた
20km、足の状態に加えて暑さが気になり出す。既に汗も多くかいている。ときどきある木陰がありがたい。西側の龍宮街道の東端で最初の折り返し
25km、右脹脛を痛めて以降の直前3週間で走った最長の走行距離を超えた。ここから先は足がもってくれるか未知数
30km、やったぞ。スタート前に頭にあった今日の走行距離の目安を通過
とにかく「5kmずつ走る」ことを意識。この調子で次の5kmを行ければ、40kmを目指せるかも
35km、山道のアップダウンがはじまる。ウォーキングするか少し迷ったが、上りは脹脛の筋肉を使わないので歩くことなく進む
40km 、「今日のこの足でここまで走ることができた」という安堵の気持ちと、少しの自信。走り方のコツが掴めたせいか、あれほど神経を尖らせていた脹脛が徐々に気にならなくなっている
45km、海のように雄大なサロマの湖畔のサイクリングロードを走る。フルマラソンの距離を通過、この時点で54.5kmの大エイドまでいくことを目標に設定。700ペース
ウルトラの世界
50km、少しペースは落ちたが、ここまでは完走を狙えるペース。上り坂では走ることに拘らずパワーウォークをはじめる
55km、大エイドの手前でかなりペースが落ちて苦しさが増す
「ここまでもう十分に頑張った、この先での爆弾のリスクもある」
このまま大エイドでリタイアすることが頭の中でチラついた
大エイド、予定通りにドロップバックを受け取った。急いだつもりだが補給とトイレで15分くらい要した。椅子に座ったり地べた腰を落とすことなく着替えもパス。それでも良いリフレッシュとなり再出発
60km、残り40kmでほぼフル一本分、800ペースを意識してひたすら足を前に進める。63kmは僕にとってのジブラルタル、この先は人生最長距離を更新。暑さが増してきたので氷で頭の先から身体中を冷やしながら凌ぐ
魔女の森からワッカへ
65km、待望の魔女の森だが、足が鈍りスピードが落ちて後続に抜かれまくる。木陰は嬉しいが応援もなく心が折れそうになる。斎藤商店エイドでおしぼりと温かいお茶とプチトマトと元気をもらう。私設エイドで頂いた冷えたコーラに救われる
70km、単調で走りにくい歩道が続く。疲労は限界を超えて800ペースをキープできない。エイドのトイレ待ちの時に話をしたワラーチランナーさんから、このペースなら時間内にゴールできると聞いた。9時間以内に80kmまで行くことを目標とする
75km、大きな橋を渡るとついにワッカへ。「まさかワッカまで来ることができるとは、、、」スタート前には夢にも思わなかった
80km、目安としていたスタートから9時間を5分まわって通過。ワッカ原生花園の景色に包まれる
85km、苦しく長い至極のワッカタイム。早くここを抜けてゴールに向かいたい気持ちと、夢のようなサロマンブルーに包まれて走る幸せをずっと終わらせたくない気持ち。経験のない矛盾に心が震える
奇跡の完走
90km、最後の折り返し、900ペースで行ければ制限時間に間に合う。まさか最後の最後に爆弾にやられる悲劇を起こさないよう、朦朧とした意識の中でとにかく慎重に足を運ぶことにだけに集中
95km、長く単調な上り基調の歩道。周囲のランナーも心身とも限界すれすれにいて、ひたすらゴールのことだけを考えている様子。僕はとにかくここまで来て「寝た子を起こす」ことだけは避けたい。ところどころ歩きを挟んで疲労困憊の足を繋ぐ。ペースは900近く
100km、爆弾があるので制限時間ぎりぎりになっても最後にダッシュする手段は絶対にとれない。ハムストリングはとっくに限界を超えてる。もう10km以上前からつま先から付け根まで脚全体が痙攣している。いつ激しい攣りが襲ってきてもおかしくない。全身の中の未だ使える筋肉のギリギリを探り探りしつつ、ゆっくりゆっくりと身体を前へと運ぶ
スタートから12時間53分
常呂町スポーツセンターの先で最後の右折をすると、ついにフィニッシュゲートへ、、、
完走メダルをもらう
安堵と感激の涙
「サロマのキセキ、完」
追記へつづく(サロマ湖100kmウルトラマラソンのこと#4【エピローグ】)