「少しずつ上手くなるのではなく、コツをつかむと一気に上手くなります。練習するのは、上手くなるきっかけをつかむためで、そのチャンスは、100回練習するよりも1千回練習した方が多くなる。努力は、ひらめくためにするんです」

上手くなる、強くなる
これは、米国メジャーリーグで活躍する菊池雄星選手の言葉です。経験と実績に裏打ちされた含蓄のある話だと思います。
菊池選手は読書家としても知られているそうですが、この言葉が語られたインタビューを見ても、言語感覚が鋭いことがわかります。そして、僕が特に気になったのは、「上手くなる」という部分です。
彼の後輩であり、今や世界最高の野球選手とされる大谷翔平選手も、究極の目標として「野球が上手くなること」を口にしていたのを聞いたことがあります。
このように野球界では「上手くなる」という言葉がよく使われます。でも、ランニング界ではほとんど聞きません。
「速くなる」「タイムを縮める」といった表現もあるけれど、一般的なのは「強くなる」なのだと思います。

強くなるとは
では、ランニングの「強くなる」とは何か?
僕の中では、それはこういうことです。
・長い距離を走れるようになる
・速さを維持できる時間が伸びる
・苦しい場面でもペースを落とさずにいられる
ただ速くなるのではなく、ただ長く走れるようになるのでもなく、走ることに対して「強くなる」感覚。
そして、それはある日突然訪れるものではありません。
野球のように「コツをつかんで一気に上手くなる」ことは、ランニングでは滅多にないのではないでしょうか。
少なくとも、僕は経験したことがないです。
ランニングの上達は、どこまでも地味で、ゆっくりで、気づきにくい。
ただ、ある日ふと気づくことがあります。
「なんだか今日は楽に走れるな」とか、「いつの間にか、この坂を歩かずに登れるようになってるな」とか。
そういう変化の積み重ねが、「強くなる」ということなのだと思います。
たくさん走れば、脚力や筋肉は自然と鍛えられる。だけど、それだけじゃない。
百キロ、千キロ単位で走行距離を積み重ねる中で、身体が動きを覚えて、フォームが洗練され、エネルギーのロスが減っていく。気づかないうちに、少しずつ「上手くなる」。
そうやって、上手くなったぶんだけ、強くなる。
走ることにおける上達の本質はそこにあるのかもしれません。

東京マラソン2025
今シーズンの本命レースとした東京マラソン。
昨シーズンに記録したPB更新を狙いましたが、身体が思うように動かず、体調不良となり、不本意な結果に終わりました。
結果は目標としたタイムに20分プラスの3時間33分。
直前まで計画した通りに準備はしっかりやったし、一年前と比較しても、フォームや走り方は少しずつ改善していて、体力・技術・経験のいずれのレベルも上がっていた、はずでした。
実際のところ、去年の自分より多少は「上手くなった」けれど、「強くなる」までには到達してなかったのか。
もっと強くなれるよう、地道に積み上げていきたいです。

つづく